while you can

”いつか望みはかなう”

コマーシャルに大量生産されるその空虚な文句は、”いつか”、”いつか”と人びとにお金を使わせるためのコピーでしかないと18歳のころに気づいてから、”いつか”という言葉が大嫌いになった。身を引きはがされるような負荷をかけないと、生活は変わらないし、自分自身をも変えることはできない。

そんな僕が、いまは、”いつか”を信じないといけない日々に陥っている。

モバイルデバイスがなく、ネットワークもない時代なら、朝陽が上って日が暮れるのを川沿いで見て、夜になったら家族でご飯を食べて寝ていたのかもしれないが、現代人はそうはいかない。

しかし、なんでも制限なく手に入り、どこへでも行けた日々を思い返してみると、”こうしておけばよかった”と思って後悔するのが本当にばかばかしく思えてくる。なぜなら、その日にしか出会えない人、見えない景色、ケミストリーのようなものがあって、それを味わうために人間は生きているような気がするから。

いつかという大嫌いな言葉を毎日考えて過ごしている。911のあと世界は変わって、”いつか”という日は来ないと世界中の人は知ったと何かの記事で読んだ。僕のいつかはいつ来るんだろうか。

いつか、と、その日の切れ目を、僕は一生忘れないと思う。